動脈管開存 (PDA: patent ductus arteriosus)とは?
動脈管は心臓から全身へ血液を送る血管 (大動脈)と、肺へ血液を送る血管 (肺動脈)をつなぐ血管で、胎児の頃には開いてつながっています。
生後は自然に閉じるのが一般的ですが、なかには閉鎖せずに開存したままの方がいます。この状態を動脈管開存症と言います。開存した状態が続くと大動脈から肺動脈へ血液が流れ込み、心臓の負担が増加します。
結果として肺に流れる血液が通常よりも多くなり、肺に血液がたまった状態(この状態を肺うっ血といいます)となります。放置しておくと心不全、肺の血流増加による肺高血圧、心房細動などの不整脈を発症し、動悸・息切れなどの症状が出てきます。
また、動脈管に細菌が付着し、感染すると感染性心内膜炎という重篤な感染症を発症することもあります。重症の場合には、乳児から小児期の時期に手術が必要となりますが、ほとんどの場合は軽く自覚症状もありません。しかしながら、年齢を重ねていくうちに動悸、息切れ、脈の乱れなどがだんだん明らかになり、30歳を過ぎたころになると多くの方が手術による治療が必要となってきます。
動脈管閉鎖治療の方法 (PDA: patent ductus arteriosus)とは?
動脈管開存症に対しては、胸を切開(開胸)して、欠損孔を直接閉鎖する手術が標準治療として長年実施されて来ました。その一方で、血管を閉塞させるコイルを使用したカテーテル(血管治療用の細い管)治療も行われてきました。
また、2000年に入ってからさらなる治療効果が期待される閉鎖栓を用いた治療が欧米を中心に始まりました。閉鎖栓はナイチノールと呼ばれる特殊な金属(形状記憶合金)の細い線から作られたメッシュ状のデバイスで、動脈管に合わせるように入れて、穴を閉じます (図1,2)。
図1:動脈管閉鎖治療について
図2:治療に用いる閉鎖栓:Amplatzer Duct occluder TM (図:Abbott 社提供)
2021年1月現在、3種類のデバイスが使用出来ますが、患者さんの動脈管の大きさや形態に一番適したものを使用します。
この閉鎖栓を用いた治療の短期・長期成績は良好であり、現在は外科的手術ではなくこちらが第1選択治療となっています。
経カテーテル動脈管閉鎖術は、心臓カテーテル室で行われます。治療は局所麻酔下で行い、ときには静脈麻酔も使用します。治療時間は1時間程度です。カテーテルを足の付け根の動脈(大腿動脈)、静脈(大腿静脈)から挿入し、心臓まで進めます。適切な大きさの閉塞栓、またはコイルをケーブルに取り付け、動脈管まで運び、留置し動脈管を閉鎖します。閉鎖栓、コイルの位置をX線装置、造影剤などで慎重に確認し、位置が適切であると判断されたら閉鎖栓、コイルをケーブルから取り外し終了となります。
当院の特徴
15歳以上の患者様は循環器内科に入院の上で治療を実施します。
幼児、小児の患児様は小児科に入院の上で治療となりますが、閉鎖栓の実施認定医(循環器内科医)が治療に一緒に入ります。
実施医
- 水谷 一輝
入院日数など
予定手術の場合は、手術日前日に入院して頂きます。
手術時間は1.5~2時間程度(CRT-P/Dは2-3時間程度)で、術後は数時間後から歩行が可能となります。
1週間後に抜糸を行い退院となります。
退院後は1か月後に来院して頂き、創部の確認と日常生活での疑問点を解決します。
その後はPM治療の場合は約10か月毎、ICD/CRT治療の場合は半年毎に来院して機械のメンテナンスを行います。