卵円孔開存(PFO: patent foramen ovale)とは?
心臓は、全身に血液を送りだすポンプの働きをする臓器で、4つの部屋(左心房・左心室・右心房・右心室)で構成されています。心房中隔は心臓の中の右心房と左心房を隔てる壁です。その壁に隙間があり交通がある状態をPFOといいます(図1)。
健常人の20-25%にPFOが認められることがわかっており、これにより症状が出現することはまれですが、PFOがあることでそこを下肢静脈などで形成された血の塊 (血栓)が通過し、血流に乗って脳血管に至ると脳梗塞 (奇異性塞栓症)の原因となります。
頻度としては全脳卒中(脳梗塞、脳出血)の3%がPFOが原因でおこる脳梗塞であると言われています。またPFOが偏頭痛の原因となることも注目されています。
図1:PFOについて
閉鎖が必要な患者さんとは?
PFOがあり、奇異性塞栓症を起こされた方はその後の再発予防治療が必要となります。
そのために血栓を出来にくくする抗血栓薬を内服することになりますが、そうすると当然血液が止まりにくくなるので、出血に関連した合併症が問題となりますし、奇異性塞栓症が再発することがあります。
そういった患者様を対象とした治療が卵円孔閉鎖術です。
カテーテル(血管の中に入れる細い管)を使って、卵円孔を閉じることで心房中隔における交通を無くす治療法です。
卵円孔閉鎖治療の方法
卵円孔閉鎖術はカテーテル透視装置が配備された部屋で治療を行います。治療は局所麻酔下、心腔内エコーガイド下で行い、治療時間は30分〜1時間程度です。
治療に当たっては足の付け根から静脈 (大腿静脈)を穿刺し、カテーテルを挿入します。大腿静脈からアプローチするとカテーテルは心臓の右心房に到達します。そこから卵円孔を通してカテーテルを進めます。その上で心腔内エコーガイドで適切な大きさの閉鎖栓を留置し閉鎖します(図2,3)。
図2:Amplatzer PFO occluder TM (Abbott 社提供)
図3:治療方法
当院の特徴
当院では脳卒中専門医とPFO閉鎖適応について議論した上で、治療を行います。
原因不明の脳梗塞や一過性の脳虚血発作を起こされたことがある方、偏頭痛※でお困りの方はPFO精査の上、適切な治療を提案させていただきますのでお気軽にお問い合わせください。
(※偏頭痛に対してPFO閉鎖を検討する際には2021年5月現在、保険診療の承認が得られておりませんので自費診療となります。)
実施医
- 中澤 学 (実施医)
- 水谷 一輝(実施医)
- 河村 尚幸
- 三好 達也(心臓エコー医)
- 松添 弘樹(心臓エコー医)
- 吉田 彩乃(心臓エコー医)
- 副島 奈央子(心臓エコー医)