大動脈弁狭窄症とは?
大動脈弁狭窄症とは、加齢や炎症、硬化などにより心臓の出口に位置している大動脈弁が十分に開かなくなる病気です。狭窄が進行すると心臓から血液を十分に送り出せなくなってしまいます。その結果、息切れ(心不全)、重苦しい感じや胸の痛み(狭心症)、気を失う(失神)などの症状が現れます。症状が出始めると突然死のリスクも高まる為、早期に治療が必要となります。
経カテーテル的大動脈弁留置術 (TAVI: transcatheter aortic valve implantation)
この疾患は基本的に薬物治療が無効であるため “弁の入れ替え”が必要となります。10年程前までは外科手術が唯一の人工弁を入れ替える方法でしたが、現在は血管内にカテーテルという管を挿入して人工弁を留置する手術(TAVI)が選択可能となっています (図1)。
この治療は多くは足の付根の血管(大腿動脈)からアプローチが出来るため胸を開いて心臓を止めるなどの処置の必要はなく、患者さんの体への負担がかなり軽減できます。年齢では80歳以上の方はTAVI、75歳未満の方は外科的手術が推奨されます。75〜80歳の患者様は精査の上、患者様・ご家族の価値観・希望を聞いた上でより良い治療法を提案します。
またその他 併存疾患(呼吸器疾患、肝臓疾患、自己免疫性疾患、がん など)をお持ちの患者様については年齢問わずTAVIの適応となることがあります。どの治療法を選択するかは造影CTなどの解剖学的な精密検査と、年齢や全身状態を踏まえて心臓外科や麻酔科医を含むハートチームで議論の上判断をします。
図1:TAVI で用いる人工弁
治療までの流れと入院日数
外来で造影CT検査や心臓超音波検査など必要な検査を行った上で入院日の決定を行います。通院が困難な場合は、検査目的の入院や、検査から治療までを一回の入院で行っています。治療は全身麻酔下ではなく、局所・鎮静麻酔下に行うことがほとんどです。
手術翌日には歩行開始して頂き、経過がよければ3日後より退院可能です。 (入院期間は1週間前後となります。)
当院の特徴
当院はTAVI専門施設に認定されており2021年より適応となった透析患者に対するTAVIも実施可能となりました。また外科的に置換された大動脈人工弁の劣化 (人工弁機能不全)に対するTAVI治療 (TAV in SAV) (図2)や鎖骨下動脈からアプローチする方法も習熟しており、積極的に治療を行っています。
どこよりも安全で質の高い治療を提供できるよう、特にペースメーカー植え込みなどの合併症発生を最小限にすべく、ハートチームで日々取り組んでいます。
図2:Valve in Valve
実施医
- 中澤 学 (指導医)
- 水谷 一輝(プロクター・指導医)
- 藤田 晃輔
- 大西 教平
- 三好 達也(心臓エコー医)
- 松添 弘樹(心臓エコー医)
- 吉田 彩乃(心臓エコー医)
- 副島 奈央子(心臓エコー医)
- 坂口 元一(指導医)
- 岡本 一真(実施医)